不動産の登記簿謄本を見たときに、昔の抵当権の登記が残ってしまっていることがあります。
八戸シティ法律事務所では、このような休眠抵当権について、抹消するにはどのようにすればよいか?というご相談をいただくことがございます。
このページでは、休眠抵当権の抹消請求の問題について、ご説明させていただきます。

休眠抵当権とは?

休眠抵当権とは、何十年も前に不動産に設定された抵当権の登記が、長期間放置されてしまっている状態のことを言います。

不動産に休眠抵当権の登記がある場合には、以下のようなデメリットがあるため、抹消するための手続をとることをお勧めいたします。

休眠抵当権があることによるデメリット

不動産に休眠抵当権の登記が残っていることによるデメリットとしては、次のようなものがあります。

その不動産を売却することが難しくなる。
その不動産を安い金額で買いたたかれてしまう。
その不動産を担保とする融資を受けられなくなる。

抵当権の登記がある場合、「その不動産は、被担保債権(抵当権のもととなる債権)の支払が滞れば、競売に掛けられてしまうリスクがある」ということを意味するため、価値が非常に低く見積もられてしまうのです。
そのため、その不動産の活用が著しく困難になります。

このようなデメリットを取り払うためには、休眠抵当権の抹消を請求する手続をとる必要があります。

休眠抵当権の抹消を請求するための理由

休眠抵当権の抹消を請求するためには、法的に抹消請求が正当と言えるための理由が必要となります。
そして、休眠抵当権の抹消請求を行う正当な理由としては、主に、①弁済、②消滅時効、③不法原因給付の3つが考えられます。

①弁済

被担保債権(抵当権のもととなる債権)がすでに全額弁済(支払)済みである場合には、抵当権の登記が保持される理由がなくなっています。
そのため、休眠抵当権の抹消請求を行う正当な理由があると言えます。

②消滅時効

消滅時効とは、一定期間、裁判による請求・弁済などが行われなかった場合に、被担保債権が消滅する制度のことを言います。
消滅時効の期間は、2020年4月以降の債権であれば原則5年、それ以前の債権であれば原則10年です。
昔に設定された抵当権なのであれば、被担保債権が消滅時効にかかっていることが多いでしょう。
この場合も、抵当権の登記が保持される理由はなく、休眠抵当権の抹消請求を行う正当な理由があると言えます。

③不法原因給付

休眠抵当権の中には、被担保債権が違法なヤミ金融からの借金である、という場合もあります。
ヤミ金融など不法な原因のために金銭を貸し付けるなどの給付をした者は、その返還を求めることができないものとされています(民法708条)。
これを「不法原因給付」と言います。
不法原因給付にあたる場合も、抵当権の登記が保持される理由はなく、休眠抵当権の抹消請求を行う正当な理由があると言えます。

休眠抵当権の抹消請求の手続

以上のような休眠抵当権の抹消請求の正当理由がある場合には、抹消に向けた手続をとっていくこととなります。
具体的な手続としては、①交渉、②訴訟(裁判)、③除権決定、④休眠担保権の抹消登記申請の制度、の3つがあります。

①交渉

抵当権の登記は、勝手には抹消することができないのが原則です。
不動産の所有者と抵当権者(債権者)とが、法務局に共同で抹消の申請を行わなければならないのが基本です。

そこで、まずは、抵当権者に対し、休眠抵当権の抹消を求める交渉を行うこととなります。
もし当時の抵当権者が死亡している場合には、その相続人全員を相手方とする交渉が必要となります。

交渉により抵当権者の協力を得られれば、休眠抵当権の登記を抹消することができます。

②訴訟(裁判)

抵当権者が休眠抵当権の抹消を拒否する場合や、抵当権者に抹消の協力を求めても応答がない場合には、交渉による解決が難しいため、訴訟(裁判)を提起することとなります。

訴訟では、休眠抵当権の抹消請求の正当理由(前述)があると認められれば、抵当権の登記の抹消を認める判決が下されます。
そして、抵当権の登記の抹消を認める判決があれば、不動産の所有者が単独で法務局に抹消の申請をすることができます。

③除権決定

抵当権者が行方不明の場合に、抵当権者に名乗り出てもらうよう、裁判所を通じて公示催告の申立てを行う「除権決定」という手続もあります。
抵当権者が名乗り出てこなければ、「抵当権を消滅させる」という除権決定が出され、不動産の所有者が単独で法務局に抵当権の登記の抹消申請をすることができます。

除権決定の手続を利用するためには、調査を尽くしても抵当権者の所在が不明であることが必要です。

また、被担保債権(抵当権のもととなる債権)の全額弁済(支払)などにより、抵当権が完全に消滅していることが必要です。
消滅時効の場合には、抵当権者に対し、「消滅時効にかかっているから、支払いません」という通知をして初めて抵当権が完全に消滅することになります。
しかし、抵当権者の所在が不明の場合には、簡単にそのような通知をすることができず、消滅時効の通知に関する公示催告という手続もあるものの、非常に時間がかかってしまいます。

訴訟(裁判)を提起した方が早く解決できるため、除権決定の手続を選択することはあまりお勧めできず、実務上もあまり活用されていません。

④休眠担保権の抹消登記申請の制度

不動産登記法70条による休眠担保権の抹消登記申請の制度というものもあります。
ただし、この制度の利用により抵当権の登記を抹消するためには、被担保債権の弁済(支払)が必要となります。

前述のような休眠抵当権の抹消請求の正当理由があることを立証できるのであれば、抵当権の登記の抹消を求める交渉および訴訟(裁判)の手続を選択する方がよいと言えるでしょう。
一方で、昔の債権の場合には、金額が低いこともあるので、利息を付けても低額で済むのであれば、休眠担保権の抹消登記申請の制度の利用を検討してみてもよいでしょう。

休眠担保権の抹消登記申請の制度の利用要件は、次のとおりです。

【利用要件】
抵当権者の所在が不明であること。
被担保債権の弁済期(支払期限)から20年が経過していること。
被担保債権額および利息・損害金を供託すること。

弁護士にご相談ください

休眠抵当権の抹消請求の問題でお困りの方がいらっしゃいましたら、専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

八戸シティ法律事務所では、休眠抵当権の抹消請求に関する対応経験・解決実績がございます。
ぜひ一度、お気軽に八戸シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。

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