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内容

従業員の退職時に発生しやすいトラブル・その2

今月号のニュースレターは、従業員の退職時に発生しやすいトラブル・その2として、退職時の有給消化と引継義務、資格取得費・研修費の返還請求について、それぞれ基本的なポイントをご説明させていただきます。

1 退職時の有給消化と引継義務
退職予定の従業員が、残りの有給休暇を全て消化すると言って、業務の引き継ぎをせずに会社を辞めようとしているとします。会社としては、(有給消化せずに)業務の引き継ぎをしっかりとしてから退職して欲しいと思うところです。しかし、請求された有給休暇を拒否することは、労働基準法上、原則としてできません。もっとも、他方で、退職の際の業務の引き継ぎは、労働契約上の従業員の義務とされています。したがって、問題は、その引継義務をいかにスムーズに履行してもらうかということになります。

引継義務を履行してもらうための方策としては、①就業規則で、引継義務とこれを履行しなかった場合の懲戒処分あるいは退職金の不支給(全部または一部を支給しない)を規定する、②有給休暇の未消化分の買い上げを行う、③休日出勤を命じて引き継ぎをさせる、④普段から有給休暇の計画的な消化を促すなどが考えられます。ただし、①~③については、有効と認められるための条件など、導入や実施に当たって検討すべき事項が多岐に渡りますので、慎重な対応が必要となります。

2 資格取得費・研修費の返還請求
会社で費用を負担して、従業員に資格取得あるいは研修をしてもらったが、その後すぐに退職してしまったとします。会社としては、負担した費用を返還してもらいたいと思うところです。実際、会社が費用を負担し、資格取得・研修の後に一定期間勤務しないと従業員に返還を義務付けるといった制度がよく見られます。この返還請求が争われた裁判例では、資格取得・研修の業務性(業務との関連性、業務命令で行われたのかなど)にポイントを置いて、返還免除の基準が明確か、返還免除となる期間が不当に長すぎないかなどといった事情も考慮して、返還請求の適法性が判断されています。

返還請求が適法となるためのポイントとしては、①返還に関する明確な合意・規定を整備すること、②退職制限(返還免除)の期間、返還の範囲、返済方法の定めに合理性・相当性があること、③資格取得・研修が従業員の自主性・自由意思に基づくものであることを申込書などで確認しておくことということになります。

以上、基本的なポイントをご説明させていただきましたが、いずれについても、検討すべき事項は多岐に渡りますので、対応に当たっては必ず専門家である弁護士に相談されるべきでしょう。退職時の有給消化と引継義務、資格取得費・研修費の返還請求で、お悩みのこと、ご不明のことなどがありましたら、まずは当事務所にお気軽にご相談ください。

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