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表面の内容

残業代対策:固定残業代と変形労働時間制について

企業・法人が退職した従業員から未払い残業代の請求を受けるケースが増加しています。今回のニュースレターでは、企業・法人にとってリスクとなり得る残業代問題への対策として、固定残業代の制度と変形労働時間制についてご紹介させていただきます。

1 固定残業代
固定残業代とは、例えば「月額賃金30万円(うち、6万円が固定残業代:30時間分)」といったように、残業代をあらかじめ定額に固定してしまう制度のことです。固定残業代の制度は、①就業規則や労働契約で、明確に規定されていること、②固定残業代が、それ以外の賃金と、明確に区分されていること、③固定残業代の金額、および何時間分の残業代が含まれているのかが、明確に定められていること、④実際の就業時間が、固定残業代で定めた時間を超えた場合には、別途残業代を支給する旨を明示すること、が要件とされます。固定残業代の制度の導入は、残業代の抑制に非常に有効です。しかし、就業規則等で固定残業代の制度を取り入れているものの、上記の要件に適合せずに無効と判断される可能性が高いケースは数多く見受けられます。例えば、「基本給25万円うち、5万円を固定残業代とする」とだけ定めた場合には、何時間分の残業代が含まれているのかが明確ではないため、無効とされるのが通常です。

2 変形労働時間制
変形労働時間制とは、所定労働時間を1か月単位や1年単位など、一定期間の総労働時間に置き換えて、労働時間を弾力的に配分させることが認められる制度のことです。法定労働時間は1日8時間・1週間40時間とされ、これを超える労働が発生した場合には残業代の支払義務が発生してしまいます。ここで、例えば、業務が集中する第1週と第4週の労働時間を43時間、業務が少ない第2週と第3週の労働時間を37時間とするなどして、1か月単位で平均すると1週間40時間に収めることで、残業代の発生を抑制することを可能とする制度が、変形労働時間制なのです。変形労働時間制を導入するためには、労使協定または就業規則で、①変形期間(1年単位、1か月単位など)、②変形期間の起算日、③変形期間中の各日および各週の労働時間、④労使協定の有効期間(労使協定の場合)を定めたうえで、労働基準監督署長に届け出る必要があります。

変形労働時間制の導入も、残業代対策には効果的ですが、業務の繁閑をあらかじめ予測しづらい業態の企業・法人では、導入および運用が困難になるという難点もあります。

3 制度の導入にあたって
固定残業代の制度や変形労働時間制を導入する際には、就業規則等の整備から導入後の運用まで、慎重かつ確実に進めていかなければなりません。残業代問題について不安をお持ちの企業・法人の方がいらっしゃいましたら、お気軽に当事務所にご相談下さい。

裏面の内容

今月号のニュースレターでは、当事務所の最近の活動状況として、①運送会社のための残業代対策セミナーを開催したこと、②有期契約労働者の無期転換ルールに関するセミナーを受講したことについて、ご報告させていただきます。

1 「運送会社のための残業代対策セミナー」の開催
2018年5月17日、当事務所の主催で、運送会社のための残業代対策セミナーを開催いたしました。近年では、企業・法人が退職した従業員から未払い残業代の請求を受ける事案が多発しており、特に運送業は長距離ドライバーの労働時間が長時間となりやすいこと、タコグラフや乗務記録(運転日報)によって残業代請求の基礎となる労働時間の立証が容易であることなどの特性から、狙われやすい業種となっています。

セミナーでは、こうした近年の傾向や運送業の特性を踏まえ、代表弁護士・木村哲也からは前半パート「残業代対策の基礎知識と予防策」と題して、残業代問題の概要や未払い残業代の具体的な計算例、残業代対策としての固定残業代の制度および変形労働時間制、労働時間の管理におけるポイントなどを解説させていただきました。また、弁護士・山口龍介および弁護士・三上大介からは後半パート「残業代請求を受けた場合の対応」と題しまして、①内容証明郵便が送付されてきた場合の初動、②合同労組から団体交渉を申し込まれた場合の初動、③裁判所からの書面を受け取った場合の初動、④要求内容を検討する際のチェックポイントについて解説させていただきました。

2 有期契約労働者の無期転換ルールに関するセミナーの受講
2018年6月1日、新日本法規出版株式会社・実務家支援セミナー「有期契約労働者の無期転換ルールの対応はできていますか?~平成30年4月に本格化!専門家による実務アドバイス~」が東京で開催され、代表弁護士・木村哲也が受講して参りました。

無期転換制度とは、有期労働契約の契約期間の通算期間が5年を超える労働者が期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、企業・法人がその申込みを承諾したものとみなす制度のことを言います。本制度は、平成25年4月施行の労働契約法改正で設けられたものであり、施行から5年が経過する本年4月から適用が本格化しました。

企業・法人においては、有期契約労働者は業務量の変動に際しての雇用調整等のために活用されてきましたが、無期転換労働者の出現が本格化することから、本制度に対応した就業規則等の整備や労務管理・雇用調整の見直しを迫られることとなりました。セミナーでは、本制度に精通した弁護士から、本制度の概要や実務対応上の留意点等について解説が行われました。このセミナーで学んだことを、地域の企業・法人のご支援に役立てていきたいと存じます。