(PDF 616kb)

内容

残業代対策:固定残業代と変形労働時間制について

企業・法人が退職した従業員から未払い残業代の請求を受けるケースが増加しています。今回のニュースレターでは、企業・法人にとってリスクとなり得る残業代問題への対策として、固定残業代の制度と変形労働時間制についてご紹介させていただきます。

1 固定残業代
固定残業代とは、例えば「月額賃金30万円(うち、6万円が固定残業代:30時間分)」といったように、残業代をあらかじめ定額に固定してしまう制度のことです。固定残業代の制度は、①就業規則や労働契約で、明確に規定されていること、②固定残業代が、それ以外の賃金と、明確に区分されていること、③固定残業代の金額、および何時間分の残業代が含まれているのかが、明確に定められていること、④実際の就業時間が、固定残業代で定めた時間を超えた場合には、別途残業代を支給する旨を明示すること、が要件とされます。固定残業代の制度の導入は、残業代の抑制に非常に有効です。しかし、就業規則等で固定残業代の制度を取り入れているものの、上記の要件に適合せずに無効と判断される可能性が高いケースは数多く見受けられます。例えば、「基本給25万円うち、5万円を固定残業代とする」とだけ定めた場合には、何時間分の残業代が含まれているのかが明確ではないため、無効とされるのが通常です。

2 変形労働時間制
変形労働時間制とは、所定労働時間を1か月単位や1年単位など、一定期間の総労働時間に置き換えて、労働時間を弾力的に配分させることが認められる制度のことです。法定労働時間は1日8時間・1週間40時間とされ、これを超える労働が発生した場合には残業代の支払義務が発生してしまいます。ここで、例えば、業務が集中する第1週と第4週の労働時間を43時間、業務が少ない第2週と第3週の労働時間を37時間とするなどして、1か月単位で平均すると1週間40時間に収めることで、残業代の発生を抑制することを可能とする制度が、変形労働時間制なのです。変形労働時間制を導入するためには、労使協定または就業規則で、①変形期間(1年単位、1か月単位など)、②変形期間の起算日、③変形期間中の各日および各週の労働時間、④労使協定の有効期間(労使協定の場合)を定めたうえで、労働基準監督署長に届け出る必要があります。

変形労働時間制の導入も、残業代対策には効果的ですが、業務の繁閑をあらかじめ予測しづらい業態の企業・法人では、導入および運用が困難になるという難点もあります。

3 制度の導入にあたって
固定残業代の制度や変形労働時間制を導入する際には、就業規則等の整備から導入後の運用まで、慎重かつ確実に進めていかなければなりません。残業代問題について不安をお持ちの企業・法人の方がいらっしゃいましたら、お気軽に当事務所にご相談下さい。

ご相談はこちら
●HOME  ●弁護士紹介  ●お客様の声  ●弁護士費用  ●アクセス