内容
業務上の注意・指導とパワハラの境界
業務上の注意・指導とされるか、パワハラとされるかは、従業員の性格や上司と従業員の人間関係などによっても千差万別であり、この境界線は実に曖昧です。今回は、業務上の注意・指導とパワハラの境界について、ご説明させていただきます。
1 明らかに「パワハラだ」といえるケース
境界線が曖昧であるとはいえ、次のようなケースは、明らかなパワハラに当たります。
① 肉体的な暴力を伴うケース:たとえ従業員が重大なミスを繰り返し、改善も見られず、厳しい注意・指導が必要な状態にあったとしても、暴力によって言う事を聞かせる行為は違法とされます。
② 人格や人間性を否定するケース:パワハラにあたる典型的なケースです。注意・指導において、「ハゲ」、「チビ」など従業員の外見について発言するとか、「バカ」、「役立たず」、「給料泥棒」などと言って、人格や人間性を否定する必要はないからです。
③ 必要以上のダメージを与えることを目的とするケース:「職場いじめ」、「嫌がらせ」目的の場合が典型的でしょう。注意・指導の目的は、ミスの是正、再発防止、教育であり、間違っても、従業員にダメージを与えることではありません。
2 注意が必要なグレーゾーンにおけるチェックポイント
裁判例を検討してみると、目的、業務上の必要性の有無、態様・頻度、結果(ダメージ)といった点を踏まえて、総合的に判断しています。いくつかの裁判例での判断を参考にすると、次のチェックポイントがパワハラの予防に役立つでしょう。
① 不必要に人前で注意・指導していませんか?:あえて人前で長時間注意・指導する理由を振り返ってみて、自己満足や周囲への見せしめ的な意味合いが本当にないかを考えてみましょう。
② その注意・指導は本当に業務上必要なものですか?:少しは業務上の必要性があっても、その必要性に対して不相当な程度の行為は、パワハラとされてしまいます。
③ 継続的にストレスを与えていませんか?:毎日怒鳴っている、頻繁に無理なノルマを課しているなど、継続性や頻度は一つの基準となっています。
④ その注意・指導によって従業員は萎縮していませんか?:不必要に攻撃的な行為では、従業員は精神的ダメージを負い、業務を行うことについても萎縮してしまいます。このような場合には、パワハラとされるおそれがあります。
業務上の注意・指導とパワハラの境界については、この事実があるから正当だ、この事実があるから違法だと明らかにいえるものは少なく、難しい判断となります。「厳しく指導していた従業員からパワハラを訴えられた」など、パワハラの問題でお悩みのこと、ご不明のことなどがありましたら、まずは当事務所にお気軽にご相談ください。
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